コンビニ店員さんとの別れを惜しむ私

私の日常

仕事中に、AGAの費用を突如として知りたくなって、どうしても我慢できずにググってしまうが、急な便意に画面を開いたまま、トイレに行ってしまい、席に戻った瞬間、
「そんな気にするほどじゃないですよ」
と、隣席のAさんに真顔で言われてしまう・・・そんな私の日常は・・・、

私は毎朝、駅チカのローソンで、ミネラルウォーターを買っている。

毎日、同じ物を買っているので、店員さんもこちらの顔を覚えて・・・、

「る、ハズなのに、毎回、ポイントで買えますがどうしますか?」

と、聞いてきて、

「いえ、そのままで」

と、返す私。

コレを毎日繰り返している。

「なんなん?」

その店の他の店員さんからは、ポイントのことなど聞かれたことはない、いや、どこのコンビニでも聞かれた記憶がない。

この店員さん、歳の頃は三十代半ばくらいに見えるが、ニキビが酷かったりするから、実際は若いのかもしれない。

このポイントを気にし過ぎな店員さん、私はいつしか”ポイントキニスキー”と呼ぶようになっていた。

“ポイントキニスキー”が親切で丁寧なのは、間違いないのだが、

「何だろう?」

誰に対しても、同じことを言うのか、確認したいところだが、そうそうタイミング良くいかないものだ。

「まぁ、そのためにわざわざ店内に残って、確認するほどヒマじゃない」

と、いうのもある。

しかし、ある日、それを確認出来るチャンスが来た。

私の前にお客がいて、レジも”ポイントキニスキー”だ、すかさず、私は”AirPods Pro”を外部音取込みモードに切り替えて、音楽も再生停止、準備万端でその時をいまや遅しと待ちわびて・・・、

「次にお待ちのお客様、こちらのレジへどうぞ」

「うぉい!!!」

思わず、声に出せない叫びを上げる。

いやいや、余計なお世話をした よく気のきく店員さんに、なんの恨みもない、あるはずがない、店員さんは自分の仕事を忠実にこなしているだけのことだ、私のように”筋トレ”の合間に仕事をしているような人間に文句を言われる筋合いはないだろう、私も自分のことを棚に上げて店員さんを・・・、

「普段、レジ待ちの人がいてもレジを開けないくせに、今日に限って開けてんじゃねぇよ!!!」

なんて口が裂けても言えない・・・、

「次に邪魔をしたらマジ許さんからな」

と、心の中で脅しをかけるだけにしておく。

せっかくのチャンスを潰されてしまったが、急ぐことはない、チャンスはまた必ず巡ってくる。

「やまない雨はない」

と、いう言葉だってあるじゃないか。

いや、使い方が違う気がするが、今は落胆のダメージでそれどころではない。

内心、忸怩たる思いで、ミネラルウォーターをレジに置く、

「レジ袋はどうしますか?」

ん?

「あっ、いえ、要りません」

「ポイントで買えますがどうしますか?」

「いえ、そのままで」

いつものやりとりだが、今日は、

「レジ袋はどうしますか?」

が、追加されていた。

どうやら“ポイントキニスキー”がバージョンアップしたようだ。

これは明日が楽しみだ・・・、

「レシートは前から出ます」

翌日、さらに新たな”フレーズ”が追加される。

さらに、翌日から・・・、

「おはようございます」

で、始まり、

「行ってらっしゃい」

で、締めくくって来た。

「どうした?」

ここに来て、どういうわけか”ポイントキニスキー”の進化が止まらなくなってきている。

ならば、ここで前々から疑問に思っていることを確認してみようか? と、いう気になる、それは・・・、

「私のことを認識しているのか?」

と、いうことだ。

正確に覚えているわけではないが、初めて”ポイントキニスキー”と会ってから、半年以上は経っている。

その間、私はずっと同じミネラルウォーターを買っている、たまに、”ヨーグルト”や”モンスターエナジーゼロシュガー”がプラスされることはあるが、基本的には毎朝同じだ。

“ポイントキニスキー”が接客以外で、お客と話しているのを見たことはないが、いつもと違う物を出せば、無意識のうちに、多少は表情に出るハズだ。

海外ドラマ、

「Lie to me」

の、ライトマン博士も、言ってたじゃないか。

いざ、実験!

「あ・・・」

いつもと違う、ミネラルウォーターをレジに置いた瞬間、バーコードリーダーを持つ手が止まり、私の方を見る、が、それ以上は何も言わない。

瞬間、

「私のことを認識している」

ことが明らかになる。

「ちょっと、違うのを試してみたくて」

と、言ってみる。

「あ、はい、レジ袋はどうしますか?」

“ポイントキニスキー”は、すぐに平常運転に戻り、いつものやりとりが繰り返される。

つまり、

「私を認識している」

と、いうことは、答えがわかっていることを毎回聞いて聞いてきていることになる。

だから、

「本当に何なん?」

会社でも、

「効率化」

が、叫ばれているこの時代、数秒とはいえ、私と”ポイントキニスキー”の双方の時間が無駄になっているのは間違いない。

こうなると、益々、他人にも同じ接客をしているのかが、気になって仕方がなくなってくる。

しかし、そんな私の願望が叶えられることはなかった。

何故なら、店舗改装の為、二週間の休業になってしまったからだ。

幸い、通勤途中にもう一件のローソンがあるので不便はないが、

「やはり”ポイントキニスキー”のことが気になる」

とは、いえ、たった二週間の話だ。

そして、二週間後、リニューアルオープンした、駅チカのローソンに、私の姿はなかった。

「だって、今のローソンの店員さんが・・・」

そう、私は二週間の間にスッカリ、通勤途中のローソンの女性店員さんに、

「やられてしまっていた」

この女性店員さんを”エレガンターニャ”と呼ぼう。

四十代くらいの、品のある、そこそこ美しい方で、私がたまたま、お店に行かなかった翌日、

「昨日はこられなかったですね、体調を崩しましたか?」

と、心配そうな顔で聞いてくる・・・、

「はい、優勝」

もう、この瞬間、私の頭の中から”ポイントキニスキー”という存在が、泡のように消えてなくなっていた。

あれほど気になっていた”ポイントキニスキー”との予期せぬ別れに・・・、

「どうということはない」

の一言で、あっさり片付けてしまう私。

本日のBGM : Dragula / ロブ・ゾンビ

このBGMは、話の内容とは一切関係ありません。

ただ、書いている時に聴いていた、というだけのことです。

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