仕事中に、ウォーキングをしていたら、以前取引のあった、下請け会社の人とバッタリ会ってしまい、その場で、四十分以上の無駄話に付き合わされて、仕事に対するモチベーションが下がってしまったので、覚悟を決めてウォーキングに全集中する・・・そんな私の日常は・・・、
私が今の課に来てかれこれ5年ほどになる。
仕事に不満はない、
「まぁ、ある種のルーティンワークではあるが・・・」
それに課が変わっても、部は変わってないので、職場環境が大幅に変わるわけではない、良い人も多いし、居心地の良い課ではある・・・、
「”ソロスキー”の存在を除けば、だ」
“ソロスキー”とは、私の直属の上司にあたる人物だ。
年齢は私と同い歳だが、学年は一つ上になる、そして、私が中学二年生で引っ越すまで、ほど遠くない場所に住んでいた。
ただし、学区が違うので同じ学校ではかった。
とはいえ、
「どこかで必ずすれ違っていた」
なんて、ことを配属初日に話して盛り上がったものだ。
その時の私は自分の幸運に感謝したものだ。
歳も同じ、地元も一緒、お互いにこれから上手くやって行けそうな気がした・・・、
「私が、どあほう、だった」
“ソロスキー”は信じられないくらい、
「クセつよキャラだった」
そのことに気づいたのは、会ってわずか数時間後のことだった。
きっかけは、仕事で必要なデーターがあり、それが配属されたばかりの私には、アクセス権限がないフォルダーに入っていて、それを”ソロスキー”に言って、共有フォルダーにコピーしてもらおうとした際、
「ああ、今、アクセス権限の申請をしているので、それまでは私のパスワードで入ってください・・・これが私のパスワードです」
と、手渡された紙に書かれていたのは、
「mayu_mayu_love18634」
と書かれていた。
・・・?
・・・・・・?
私は誰の目にも明らかなほどに固まっていると、
「まゆまゆらぶ18634」
ですよ、と、マグカップ片手に躊躇なく堂々と言い放った。
しかも、その手にしているマグカップ・・・、
「萌え系の少女キャラ」
がデカデカとプリントされている。
私は、一瞬、周りを見渡してしまったが、みんな何事もなかったかのように仕事をしている。
「あ、はい、ありがとうございます」
と、平静を装うも、
「こいつ、頭大丈夫か?」
と、心の中で、ドン引きし過ぎてブラジルまで飛んでいた。
しかし、この後、さらなる衝撃が私を襲った。
データを確認しつつ、仕事をしていたのだが、まだ、慣れない環境で緊張していたのか、ケアレスミスをしていることに気づいて、修正しようとした瞬間、
「お前、しっかりしろよ、何やってるんだよ」
と、突然”ソロスキー”が言い出した。
私は思わず、
「すいません、今すぐ修正します」
と、謝るが・・・、
「何でわかったんだ?」
との、疑問が浮かぶ。
しかも、何のリアクションもない、すると、
「いや、疲れてるのかな? もう少しだからしっかりしろ」
またしても”ソロスキー”の声が・・・、
私は、恐る恐る、隣に座る”ソロスキー”の方を見る。
真剣な表情でパソコンの画面をにらんでいる。
「後もうちょっとだな、コレを片付ければ、明日がだいぶ楽になるぞ」
・・・まさか?
「いや、ないない」
私は、疑心暗鬼のまま、とにかくミスを修正することに集中・・・、
「出来ねぇ」
気になって仕方がない・・・すると、
「あー、こっちが終わってなかったじゃないか、何やってんだ」
「キターーー」
もう、疑う余地などないのは明白だ。
「完全にして完璧な独り言だ」
この瞬間、私は何となく察しがついた。
先程のへんてこりんなパスワードにも、周りが反応しなかったのは・・・、
「コレが平常運転」
と、いうことだろう。
会って、まだ数時間しか経ってないにも関わらず、もう・・・、
「近寄りたくない」
と、思ってしまう私がいる。
しかし、
「そうはイカの金玉」
冒頭でも書いたが、”ソロスキー”は私の直属の上司で、何だったら、一番関わる相手なのだ。
翌日から、私は騒音という名の、
「独り言」
に悩まされることになる。
大体、一時間に数回は、独り言を言っている。
しかも、厄介なのが、普通に人と話すトーンで独り言を繰り出してくることだ。
うるさいのは、もちろんのことだが、独り言かと思ったら、私に話しかけている時もあるため、右から左に流すなんてことはできない、
「いや、それができるなら、どれほど助かることか、話し声と言うやつは、思いの外耳に入ってきてしまうのだ」
仕事中に、イヤホンをするわけにはいかないし、
「どうしたものか?」
と、思っていたが、日を追うごとに段々と慣れてくる・・・、
「ワケないだろう、ストレスマッハだわ!」
周りの人達はどうしているのか?
幸い、この課には昔馴染みの社員がいるので、どストレートに聞いてみる。
「”ソロスキー”独り言酷くないか?」
「もちろん、気になって仕方ないですよ」
と、”チャッチャくん”は言う。
五十過ぎのおじさんだが、彼が新入社員の頃から、付き合いなので、今だにそう呼んでいる。
「だから、耐えられなくなったら、会議室で仕事します」
「マジか!」
驚く私、すると、
「みんな、口にはしないけれど、迷惑してますよ」
と、後に新たな騒音問題の元凶となる”ノンアス”が割って入ってくる。
「やはり、みなさん気にはなっているんだ」
と、納得するも、それで騒音問題が解決するわけではない。
私にできることは・・・、
「悪いね、お邪魔するよ」
と、会議室で”チャッチャくん”の隣で仕事をする私が居た。
ちなみに、騒音問題は以外な形で決着がつく。
部内で課や係の再編成があり、それによって”ソロスキー”は、別の係の担当になり、私の前から居なくなる。
めでたし・・・、
「じゃねぇ、文章だと一瞬だが、実際は四年間会議室で仕事してたんだからな!」
とはいえ、これで自席で落ち着いて仕事出来る、と安堵する私・・・、
だが、その時の私は思いもしなかった。
それは新たな騒音問題の幕開けでもあった、ということに・・・。
本日のBGM : You made it happen / Whale Taylor
このBGMは、話の内容とは一切関係ありません。
ただ、書いている時に聴いていた、というだけのことです。


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